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BattleTech #2 「海賊退治」

更新日:2022年8月14日

自治政府や小規模星間勢力が群雄割拠する辺境宙域には大国の影響力は及ばない。

それゆえ辺境宙域は政治的自治や自由を謳歌しているが、その代償は大きい。

強力な権力の不在は地域の不安定化につながり、宙賊などの犯罪者の跋扈を許した。

貧弱な辺境宙域の政府が「法と秩序」をもたらすため傭兵に頼るのは必然であった。


そんな30世紀末の辺境オーリガン領域で勇名を馳せた傭兵組織があった。


チェッカー傭兵団


辺境宙域の戦士でチェッカー傭兵団の名を知らぬものはいないだろう。

オーリガン連合の大卿タマティ・アラノ2世にも雇われたことのあるチェッカー傭兵団は、30世紀末の辺境宙域でも最も頼りがいのある最強の軍事集団であった。


「剛勇隊長」と呼ばれたレヴィンにより設立されたチェッカー傭兵団は、数多くの個性的なメック戦士を抱えていた。

創設者レヴィン自身もカペラ大連邦の貴族でありながら地位と財産を捨てて辺境宙域に身を投げ出した変わり者である。しかしその実力は確かなものであり、レヴィンの愛機である「レボット」の餌食になったバトルメックは数えきれないといわれる。


辺境最強と謳われたチェッカー傭兵団だが、31世紀初頭、急速に弱体化することとなる。

そのきっかけはレヴィン暗殺であった。


ある日、いつもの様に簡単な任務を終えて休もうとするレヴィン隊長を一本の矢が襲った。

その矢はレヴィン隊長の心臓を射抜いた。即死であった。

誰が弓を引いたのかはわかっていない。

レヴィンに恨みのある敵対組織か、正当な評価を受けられず憤慨した部下なのか、より複雑な陰謀なのか……。

犯人が誰であったにせよ、求心力のあったレヴィン隊長が死んだことによりチェッカー傭兵団が瓦解するのは時間の問題であった。

隊員たちは互いにいがみ合い、チェッカー傭兵団から人が消えていった。


レヴィン隊長の後継者が決まることには既に構成員の半分以上が隊を抜けていた。

偉大なるレヴィンの後を継いだマーカムには、前任者の様なカリスマも実力も欠けていた。

二代目隊長マーカムの時代にチェッカー傭兵団は衰退の一途をたどった。

 

時は経ち、3022年のコロメディア。

仕事探しにオーリガン連合の首都を訪れていたチェッカー傭兵団は、エスピノーザ家によるクーデタに遭遇した。

物資調達に来ていたマーカム隊長は市場を襲った爆弾に巻き込まれて死んだ。

混乱の中でチェッカー傭兵団の副隊長ダリウス・オリヴェイラは、厄介毎に巻き込まれる前にオーリガン連合から脱出しようとした。


惑星から離れようとする途中でオリヴェイラ副隊長は見覚えのあるメックを発見した。

かつてチェッカー傭兵団とも共闘したことのある歴戦の勇士マスチフの機体であった。

旧友マスチフを助けるために戦地に向かったオリヴェイラ副隊長が到着する頃には既に戦闘はエスピノーザ軍の勝利に終わっていた。

マスチフ機の残骸を目にしたオリヴェイラ副隊長は深い悲しみに襲われた。


オリヴェイラ副隊長が失望の内に戦場を去ろうとしたその時、遠方の方から苦しむ声が聞こえてきた。

声のする方へ近づくと、そこには機能を停止した一機のブラックジャックと辛うじて一命をとりとめた操縦士の姿があった。

深く考える前に行動を起こしたオリヴェイラ副隊長はその機体と操縦士を回収した。

 

3025年、辺境の鉱山惑星ウル・クルイン軌道。

地元の鉱山会社の小競り合いに介入したチェッカー傭兵団員が母船のレパードに帰還した。


「借金返済までにどんだけこんな仕事を続けなくちゃいけないんですか、隊長?」

「わからない。僕たちにできるのは目の前の仕事を一つ一つこなしていくことだけだよ」


隊長と呼ばれた男は、3年前のコロメディアのクーデタでオリヴェイラ副隊長に助けられた人物、元オーリガン連合近衛兵のロマニウスであった。

ロミリウス一族の虐殺に続いてオーリガン連合の政変で再びすべてを失ったロマニウスは、あのクーデタ以降、チェッカー傭兵団と行動を共にしていた。


彼が加わった時点で、チェッカー傭兵団の構成員数は10人以下にまで減っていた。

レヴィン死後の弱体化に加え、コロメディアのクーデタに巻き込まれてマーカム隊長たちが死んだことも人数の極端な減少の原因であった。

クーデタの直後、マーカム隊長を失ったオリヴェイラ副隊長は「隊長も船もバトルメックも団員もいないこと」を理由にチェッカー傭兵団の解散を考えていた。

しかし、命を救われたロマニウスはオリヴェイラの悲観的な案に猛反対し、一緒に傭兵団を立て直そうと失意の副隊長を励ました。

オリヴェイラ副隊長を説得したロマニウスは、体調と機体が元に戻るとチェッカー傭兵団の一員としてバトルメックに乗った。

現場で実力を示したロマニウスは他の団員からの支持を受け、三代目のチェッカー傭兵団長となった。


傭兵団長となったロマニウスは、組織の抜本的な改革と再建のために銀行から多額の借金をした。それを元手に新たなレパード級の母船を購入し、古びたメックを改修した。

借金返済に追われることになったとはいえ、まともな傭兵組織として再出発したチェッカー傭兵団は、実入りは少ないが着実な仕事をこなして生計を立てていった。


そして3年の時間が流れた。

その間にメック戦士シンヤ・ナカジマやユウヒ・イワキリは戦死した。給料の未払いによる団員の離脱もあった。

結果としてチェッカー傭兵団に残ったのは5人のみとなってしまった。

つまり、隊長のロマニウス、副隊長のオリヴェイラ、操縦士のスミレ・マイヤー、整備士のヤン・ヴィルタネン、そしてメック戦士のシモヤカである。

バトルメックは5機あるのに対し、メック戦士はロマニウスとシモヤカの二名しかいない。これが問題なのは明らかだった。メック戦士の補充が最優先課題であった。


ウル・クルインでの仕事を終えたチェッカー傭兵団は惑星ベレロフォンでの宙賊退治の任を受けた。奇しくもそこにはかつてチェッカー傭兵団に属していたタケッチという男がいるという噂があった。

タケッチとの合流を期待しながらチェッカー傭兵団は惑星ベレロフォンへと向かった。



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