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Mass Effect #3 「カイル大佐」

更新日:2022年5月15日

シタデルを出港したノルマンディーの艦長シェパードは、サレンとゲスについての情報を集めるため、めぼしい宙域をしらみつぶしにすることとした。手始めにホーキング・エータに向かったシェパード少佐は、移動時間を利用してノルマンディー号の査閲をしながらクルーと会話を交わし、銀河の歴史や情勢について学んだ。

ノルマンディー艦長に就任して初の航行先であるセンチュリー星系に到着したシェパード少佐のもとに、第五艦隊のハケット提督から連絡が入った。

「ホーキング・エータで元連合軍人カイル大佐が、バイオティクスを集めて連合に批判的なカルト教団を組織している」

カイル大佐という名を聞いた時、シェパードの心臓の鼓動は早くなった。カイル大佐は士官学校を卒業したばかりのシェパードを評価してくれた元上官であり、「トルファンの惨劇」の責任者であった。カイル大佐シェパードの人生を変えた人物であったが、シェパードカイル大佐の人生を変えてしまった。つまり、「トルファンの惨劇」で名を挙げたシェパードはスペクターに至るまでの出世街道を歩むようになったが、カイル大佐は「トルファンの惨劇」の責任を感じて精神を病み除隊処分を受けていたのである。

「すでに派遣した連合の担当官は消息を絶った。調査と解決を任せる」

ノルマンディー号艦長としての最初の任務は、シェパード少佐にとって過去と向き合う試練となりそうだった。複雑な心境を抱きつつカイル大佐の潜伏する惑星プレスロップに向かうシェパード少佐は昔のことを思い出していた。


地球でギャングとして暮らしていたローマン・シェパードは、連合軍入隊後、軍の奨学金で士官学校に入学した。辺境宙域における犯罪者取り締まりを担当していたカイル大佐は、優秀な成績に加えて犯罪者であった過去を持つシェパードに興味を抱き、士官学校を卒業したばかりのシェパード少尉を引き抜いた。戦災孤児を生み出してしまう軍人としての業を背負うカイル大佐は、せめてもの罪滅ぼしのために孤児の保護活動をしている慈善家であった。

辺境宙域に配属されて数々の宙賊討伐作戦に参加して実績を残したシェパード少尉は、カイル大佐に最も信頼される下士官の一人となっていった。特に2178年前半に行われた「セシャカ掃討作戦」は、カイル大佐と若きシェパード少尉の名を知らしめる重要な軍功となった。惑星セシャカに設置した探知機を用いて宙賊の主要基地を特定・破壊した「セシャカ掃討作戦」でホン星系における犯罪活動を一掃したシェパードは中尉に昇進し、カイル大佐の秘蔵っ子とみなされるようになった。だが、彼らの仲は同年におきた「トルファンの惨劇」で引き裂かれることとなる。

エリジウムの敵討ちとして展開されたトルファンの月強襲作戦は、連合艦による宙対地爆撃で幕を開けた。連合軍は軌道上から衛星表面の宙賊基地破壊に成功するも、犯罪者たちは地下深くに逃げ込んだため地上部隊の派遣が必要となった。そこで作戦指揮官であるカイル大佐は周囲の懸念を押し切って、弱冠24歳のシェパード中尉に地上部隊の指揮を命じた。

精鋭部隊を率いたシェパード中尉であったが、敵の待ち伏せにあって部隊の約75%を失った。それに対しシェパードの部隊は降伏する敵まで皆殺しにし、後に「トルファンの惨劇」と呼ばれる虐殺が繰り広げられることとなる。敵味方に甚大な被害をもたらした「トルファンの惨劇」は、結果だけ見れば「スキリアン強襲」に対する報復という当初の目的を十二分に発揮した。

「トルファンの惨劇」はシェパードの名を一躍広め、彼のキャリアでも忘れることができない実績となった。一方で、シェパード中尉を指揮官に任命したカイル大佐は、多数の死者を出した「トルファンの惨劇」を招いた責任に苛まれた。戦災孤児を保護する運動に参加していたカイル大佐の善良な心は、彼の人事により多数の孤児や寡婦を生み出してしまった現実に耐えることができなかった。自らの犯した罪と偽善から来る自己嫌悪は、自らの所属する軍への非難につながり、連合を批判する急先鋒として反体制派の注目を急速に集めた。連合はカイル大佐を危険分子とみなし、名誉除隊の処分を下して軍の精神病院に入院させた。

数年後、反体制派のバイオティクスの一団が精神病院からカイル大佐を誘拐した。連合に苦しめられていると信じるバイオティクスの一団が、カイル大佐を「連合の不正を指摘する預言者」であると信じてプレスロップに連れ去ったのである。バイオティクスの一団を守るべき孤児と思い込んだカイル大佐は、こうして狂信者たちを率いる教祖となったのである。


惑星プレスロップに上陸したシェパード少佐は、恩師であるカイル大佐が率いるカルト教団に接触した。話し合う姿勢を示したカイル大佐と面会したシェパード少佐は、かつての恩師の目に光がともっていないのを感じると同時に、父の様な優しさの灯が消えていないことにも気が付いた。

カイル大佐はカルト教団を利用しているわけではなく、彼らを連合の構造的暴力が生み出した孤児と考えているのだ」

そう確信したシェパード少佐は、カイル大佐の良心に訴えることにした。

「もし戦闘になれば、多くの信者が死ぬことになります。もし教団が勝つことができても、信者たちは、今大佐が苦しんでいるような良心の呵責に生涯苛まれるようになるでしょう」

「トルファンの殺人鬼」の言葉には説得力があった。自らのエゴのために、また多くの人を苦しめることになっていたかもしれない大佐は、自身の罪を悔いて降伏を約束した。連合が派遣した部隊に投降したカイル大佐は、カルト教団を解散し、精神病院へと連れ戻された。トルファンの殺戮者は、一人の犠牲も出すことなくカイル大佐の教団を解散することに成功した。こうして初単独任務を終えたシェパード少佐は、トルファンの亡霊から逃れるようにしてケプラー・ヴァージに移動した。


ケプラー・ヴァージでは、元連合の科学者が次々と殺されていくという事件に遭遇した。ハケット提督から調査命令を受けたシェパード少佐は、命を狙われるウェイン博士が研究所を構える惑星オンタロムに急行した。

間一髪のところでウェイン博士を狙う兵士の一隊を排除したシェパード少佐は、事件の首謀者であるトゥームス伍長と対峙した。「サーベラス」という組織の非人道的な研究の実験台にされたと主張するトゥームス伍長は、復讐のために科学者たちを殺して回っているという。ウェイン博士を人質とするトゥームス伍長をやむなく射殺したシェパード少佐は、非人道的な実験をしたとされるウェイン博士の身柄を連合に引き渡した。こうして事件は落着したが、古代ギリシア神話に登場する地獄の番犬の名を冠する「サーベラス」という謎の組織に関して釈然としない気持ちが残った。


続いてアームストロング・ネビュラに向かったノルマンディー号には、ゲスが設置している前哨基地を破壊するという任務が与えられた。ゲスの前哨基地を無力化した少佐は、暗号化された敵のデータの回収に成功した。こうして辺境宙域での任務をこなしていったシェパード少佐は、人類の入植地フェロスへ向かうこととした。





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